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ゲンバビト

by 加藤 いさお

スピンオフ第六話

野良犬哀歌(エレジー)

野良犬を見たことがあるかい?

野良猫は見かけても

ここ最近、野良犬をめっきり見かけなくなった。

僕がガキの頃は

野良犬だらけだった

その野良犬が子供を産み

僕らが住んでいた団地のガキ達は

秘密基地を作りその

仔犬の寝グラを作り

心の底から可愛がった

時にはその仔犬が死んだりして

僕らは泣きじゃくった

そこで初めて学んだんだ

(生命の尊さ)ってやつを

みんな勘違いしているのは

(野良犬のように)と悪い例えをするが、あいつらはそんな例えがされる

生き物じゃねえんだ

言葉で表現すると

そうだな

(気高い)んだ

必死で生きる為に食い物をさが

し、子供が産まれたら

親はそっちのけで子供がすくすく育つためになんでもやるのさ。

(あいつは野良犬のような奴だ)

そう言われると最高の褒め言葉なんだ

野良犬とハイエナを勘違いしちゃいけねえ、ハイエナは群れをなし

知っての通り

(おこぼれを頂戴する)タチの悪い奴らだ。

だからさ、卑怯な奴や人の茶碗で飯食ってる奴には(ハイエナみたいな奴だな)って堂々と使ってやりゃあいい

僕は、最近インターネットの(里親募集サイト)を見るのが日課になっている 一つの画像が目に入った

(ミニチュアピンシャー生後二ヶ月

血統書なし)

保健所行きの片道チケットを手にした

こいつを僕は見に行くことにした。

堺市の光明池という場所にその

ペットショップはあった

後輩のカズヤと一緒に

そのペットショップに入ると

今時の(ギャル)が

「いらっしゃいませ」と僕ら二人に喋りかけてくる

「ミニチュアピンシャーを見に来たんですけど」

「ああ、電話くれてた方ですね

そこにいますよ」

ソコに視線を向けると

鳥籠のような狭いケージだった

いや、牢獄だな

「この子はこのケージから一歩も出た事ないんすよ、出して見ます?」

(何言ってんだこいつは?

人の皮をかぶった悪魔のような事言いやがって)

「出してください」

そいつはヨロヨロと歩き出した

狭い牢獄に閉じ込められて

歩き方がわからないのか

たまにコテンと倒れやがる

それでもそいつは

僕の方に「なあ、あんた私を救ってくれよ」と言いたげに

こっちに向かってくる

そして僕にくっついて離れようとしない

「この子連れて帰ります」

「ええ?本当ですか?

血統書も無いんですよ、ミニチュアピンシャーかどうかもわっかん無いっすよ」

「ええ、連れて帰ります」

「じゃあ、ワクチンを一応打ってるので、ワクチン代だけもらいますね

あと数日で

保健所に行く所でした」

あたりを見渡すと

不衛生で所狭しと

牢獄に詰め込まれた犬ばかり

無性に腹が立つ

「ねえ、おねえさんなんでこんなに

可哀想な事をしてるの?」

「何がっすか?」

「こんな鳥籠みたいなところに閉じ込めて、ここにいう犬達は何かに絶望してるよ」

「そうっすかね?私、バイトなんでわからないっす」

こんな奴に何を言っても話にならねえ

帰りの車の中

カズヤが言う

「許せないですね、あんなペットショップがあるんですね」

「ああ、クズみたいな商売しやがって」

「でもこいつは幸せですね

生命を救ってもらって」

ブルブル震えるこいつを

ぎゅっと抱きしめ

「もう安心しな」と声をかけた

「しかし、小さいなこいつ」

「そうですよね、かなり小さいです」

「よし、名前はピコやな

ピッコロはイタリア語で小さい

しっくりくるな」

「良い名前ですね、ピコよろしくな」

ペットブームに便乗して

飼ったは良いが

すぐに飼う事を放棄して

捨てる心ない奴らがめちゃくちゃ多いせいで、保健所はパンパンになっていると聞く

里親で引き取られないかぎり

彼らに待つのは(死)のみ

(生命をカネで買う)

そんな矛盾した世の中

買った生命は

ディスプレイでもなけりゃ

そいつらのアクセサリーでも無く

間違いなく

(家族)なのだ

(無償の愛)どうやらニンゲンなんかよりも、おめえらの方が

その意味を深く知っているのだろうな

目を閉じると

ガキだった僕らの後ろを

尻尾を振りながら

ガムシャラについてきていた

(あの仔犬)の事を思い出した

追いかけるのも必死

生きるのも必死

そして産まれる事も必死

気高いじゃねえか

野良犬達。

そして野良猫達。

「なあピコ」

僕はそっと彼女の頭を撫でた。

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