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ゲンバビト

by 加藤 130

スピンオフ

愛と哀 前編

ご無沙汰だな、最近どうしてるかって?

忙しくやってるさ

だってさ、みんな憶えてるだろ?

ずっと一人だったんだぜ

それがいつの間にか

僕の経営する会社は

僕を含めて12人に増えた

会社経営ってさ

お堅い言葉で括ると

ゲンナリしてくるんだけど

血縁関係のない

(家族)だと思えば

マフィアのような血の結束を感じないかい?

嗚呼、なんでそんな例えしかできないかって?

まあ、目を瞑れば遠い遠い昔に

そんな世界に居た(癖)だろうな

とにかく僕の周りは

変わった奴が多くてさ

今回は(その一人)の話をしようじゃないか。

Instagramという

ファッション業界で働く人間には

画期的なツールがある

インフルエンサーと呼ばれる

バーチャルの中のスターが

輩出され

芸能人でも無い人々が

(手の届きやすい身近な)人気者

としてメーカーからの

PRとよばれる宣伝で

仕事が成り立っている

人々が全世界に沢山いる

ユーチューバってやつもそうで

あんなにテレビが最強だった

昭和の娯楽が

進化しすぎて

テレビが面白くないと言われている

話が脱線しちまったな

そうそう、Instagram

要は格好つけた写真をUPすると

その投稿が全世界に瞬時に周り

僕如きの投稿でも

時にはソレを見て舗に来てくれたりする。Instagramには

DMというメールのような機能がついていて、違うユーザーから

メッセージが届く

ポケベルから育った僕には

デジタル化の急成長には

ただただ驚くばかりだ。

青春時代を東京で過ごした僕は

大阪に戻り

そして二年ほど前に

今度は(仕事で)東京に斬り込んだ

結果?

返り討ちにされたぜ

有楽町という

ほぼ銀座に近い土地の

百貨店のポップアップの依頼があったのさ。

僕の会社は(ゲリラ屋)で

斬り込んで結果を残す

少数精鋭部隊でなり立っている

ガンダムで言うと

(ランバラル隊だな)

だけどさ、大人の事情ってやつに

この部隊も巻き込まれちまって

僕は撤退を決めた

僕の右腕のヒロミチを

東京に派遣したのに

また戻ってきてもらう決断をした矢先

一通のDMが届いた

内容は

「こんにちは、ユースケって言います

御社のスタッフのヒロミチさんの

接客に感銘を受けて

是非働きたいと思い

メールしました」

馬鹿な僕が「バカだなこいつ」と思うくらい礼儀知らずなメールだった

だけどさ

僕は、バカが好きなんだ

10代の頃から僕の周りは

(バカ)しか居なかった

トモヨシもペコもヒデキさんも

そして居酒屋の大将も・・・・

みんな生きる事に一生懸命なバカだった。

今の組織もそうだ

良い意味で

(バカの集まりなのだ)

(メールありがとうございます

残念ながら東京から撤退が決まっていまして、貴方を雇うことができません

折角メッセージをくださったのに

ごめんなさい)と返信した

(大阪に行く覚悟ができています

千葉から大阪に引っ越してでも働かせてください)

ほら、バカだ。

全てを投げ捨ててでもウチで働きたいなんて、こいつは愛すべきバカに違いない

(じゃあ、東京出張の時に一度

面接してみましょうか?)

「はい、お願いします」

僕は自分と重ねたのだろう

何も知らない東京の街に

17歳の時に上京して

友達も居なかった

勿論仕事も無かった

だけど、夢を持っていた

その夢は暗黒街の闇に飲まれて

バクという魔物が僕の夢ごと喰って行った。

だけど出会いがあった

思いやりを知った

圧倒的な暴力の世界も見た

だから、(二度とごめんだ

あんな世界と関わるのは)と

近づかなくなった。

そう、バカは学べば

ソレを己の武器にできる能力を持っている。

真っ白なら尚更

そのキャンバスに色を着けていける

才能を持っているんだぜ。

バカの何が悪い?

これが今の僕の原動力なんだ。

「ヒロミチ、お前を慕って

ウチに入りてえ奴がいるんだって

ユースケって知ってるかい?」

「ユースケ?さあ?

誰でしょう」

「お前は本当に薄情なやつだねえ

慕ってくれてる奴の事くらい憶えておけよ」

「はあ・・・誰ですかね」

爽やかすぎる長身で垢抜けない

容姿のその青年が

ニコリと笑って僕らに近づいてきた

「ユースケって言います」

こいつがユースケかい

ファッションとは無縁な出立ちだけど

もしかしたら僕のモノサシでは測りきれない何かを持った奴なのか?

興味が湧いた

「じゃあ、行こう、ヒロミチ

ちょっと喫茶店で面接してくるわ」

「お気をつけて」

「ああ、じゃあ行こうか?

ユースケ君」

「はい、お願いします」

二人でエレベーターに乗り

有楽町のガード下の

喫茶ルノアールに入った

「はじめまして、メッセージ見たよ

履歴書的なやつ持ってきてる」

「はい、よろしくお願いします」

「イタリア行ってたの語学留学で?」

「はい、半年間ですけどミラノに行ってました」

「イタリア語できるの?」

「いえ、少しだけです

英語は自信あります」

「そうか、そいつは頼もしいね

ちょっと聞きたいんだけど

今日のそのスタイルは自分で決めてきたの?」

「はい、そうです」何の疑いもなく

自分はセンスが良いと思っている返事が心地よすぎた

(嗚呼、こいつは化ける可能性あるな)少し勘が働いた

「本当に大阪に来る覚悟があるの?」

「はい、勿論です

すぐにでも行けます」

なんて綺麗な目をした奴なんだ。

「わかったよ、1週間後に返事をするから少し待てる?」

「勿論待ちます、ありがとうございます」

もう雇ってもらったような

屈託のない笑顔でユースケは僕を見た

「じゃあ、後日連絡するね」

そう言い残し

ユースケと別れた。

舗に戻り

ヒロミチに尋ねた

「見たことある?」

「はい、思い出しましたよ

あの子がウチで働きたいんですか?

意外です」

「そうやろな、俺も意外や」

「どうするんですか?」

「う〜〜ん、そうだな雇う」

「ええ?東京から大阪に来させるんですか?」

「ああ、なかなか根性ある奴やんか

そういう奴大好きやからさ

お前憧れられてるねんから

色々教えてあげて」

「わかりました」

さすがヒロミチ

10数年の付き合いなので

一度決めたら

絶対に曲げない事も知っているので

彼は本当に頼もしい

(戦友)だ。

さあ、ユースケ

我がファミリーにようこそ。

と歓迎したが

奴は僕の予想を上回る

バカだった。

その話はまた次回。

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