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ゲンバビト

by 加藤 いさお

第三章 交わる力

第五話 ハチ公ララバイ

公園通りを

パルコに向かって歩く

渋谷での用事を早く済ませようと

足早にクラブクアトロを目指した

センター街を通ると

(嫌な事に)巻き込まれかねないので

僕は公園通りからの

回避ルートを選んだ

渋谷にもキャッチのチームが

点在していて

この公園通りも僕らのように

(胡散臭い)奴らで溢れかえっていた

新宿のあのゴミゴミした感じとは

また違った表情の街

田舎から来た僕ら世代が

真っ先に目指す街

帝国「渋谷」

僕にはこの街がキラキラ眩しすぎて

肌に合わない

歩道の広さも区役所通りと比べて

広く舗装されていて

妙な歩きやすさも僕には気に入らない

キャッチの奴らも 見慣れた風俗系から

馴染みのない 絵画系 宝石系と

歌舞伎町には居ない人種が存在する

「おにいさん」

「ん?おお、何やってんの?」

歌舞伎町でよく見る

キャッチのおにいさんが

声をかけてきた

「なんで渋谷に?」

「系列グループが渋谷にあって

僕、週一で渋谷なんすよね」

「そうなんだ」

「おにいさんこそ珍しいじゃないっすか?渋谷に居るなんて」

「来たくないんだけどね、ちょっとクアトロに用事があってさ」

「へえ、クアトロって

ライブハウスの?」

「そうそう、よく知ってるね」

「名前くらいは聞いた事ありますよ」

「ケイスケ」三人組が

このキャッチのおにいさんに

声を掛けてきたので

「じゃ、俺行くわ、また歌舞伎町で」

「あ、はいお疲れっす」

気を取り直して歩いていると

パルコパートワンが見えてきたくらいのところで

僕を追いかける足音と同時に

トントンと肩を叩かれた

振り向くと

金髪の坊主で

全身ピアスのパンク野郎だった

(さっきの三人組の内の一人だな)

「あの、もしかしトモヨシの友達?」

「ああ、そうだけど」

ニヤリと不気味に笑いながら

唇を貫通した釘のピアスが上下に動く

「トオルさんビンゴっす」

「う〜い」

(トオル?)

「まさか渋谷で会うとはねえ」

「誰?」

「ん〜別にぃ」

ロングヘアを後ろに束ねた

このオールバック野郎は間違いなく

(あのトオルなのか?)

「色々とめんどくさい事してくれちゃってるよ君」

「あ、何がだよ?」

「君、ヒデキの友達なんだってね

でもチームには入ってないらしいじゃんか?変な奴だね」

「あんたに関係ないだろ」

「ま、いいやあ一人で何処行くの?デート?」

「ちげえよ、急いでるから行くわ」

「待ってよ〜冷たいなあ」

(からかってやがる、やっぱトオルだなこいつ)

「急いでも無駄だよん」

「うるせえな関係ねえだろ」

「ウッ」

手首に熱い違和感が走った

血がびっくりするくらいでている

「な、何すんだよおめえ」

こんなに大勢の通行人が居る前で

堂々と刃物で

手首を斬り付けられた僕は

取り乱していた・・・・・

ソレに気付いた

通行人が悲鳴をあげた

「あ〜あ〜騒いじゃって

次は刺すよ、トモヨシどこに居るの?」

「言うか、アホが」

「怖いねえ関西弁じゃん」

僕らを取り囲むように

人が集まってきたので

たまらなくなって

僕は咄嗟に走り出した

「あ〜逃げちゃうんだ〜かっこわりい」

不気味な甲高い笑い声が僕の背中に刺さるが

お構いなしに

一心不乱に走った

敗北感と激痛と何故か襲ってくる

恥ずかしさ

ソレが『交わり』

無意識に僕を走らせた

スレ違う通行人が

出血している僕を見て

全員、驚きの視線で攻撃してくる

惨めだ

明治通りに程近い公園に着いた僕は

トイレに駆け込んだ

水道の蛇口をヒネリ

水を勢いよくだし血を洗った

洗っても洗っても

また新たな血が出てきやがる

(なんなんだよあいつは)

その後の言葉が思い浮かばない

少し冷静になって

トイレを出て

幸いにも薄暗くなった

公園のベンチに腰掛けて

ペコに電話した

「ペコ」

「どうしました功希さん」

「悪いけど渋谷まで迎えきてくれる?」

「渋谷っすか?良いですけど何かありました」

「ああ、トオルに斬られて血が止まらねえんだわ」

「トオル?大丈夫っすか?なんでまた渋谷なんかで」

「何処ですか?」

「わかんねえ公園」

「とにかくそっち方面にすぐ行きます」

「ああ、悪いねペコ」

そう言いながら

初めて自分に芽生えた感情を

認めた

そいつの名は「恐怖」

気持ちを落ち着けようと

目を閉じた

その向こうは側は

瞳の奥よりも

さらに深い

暗闇だった・・・・

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